伸展著しいオンライン旅行取引について、前回の記事では、オンライン旅行取引サービスの市場規模、消費者の利用状況について紹介しました。
今回は、前回に引き続き「オンライン旅行取引サービスの動向整理(2016年9月30日 消費者庁委託調査)」(※1)より、消費者のオンライン予約時のトラブル等の状況と、お客様への適切な情報提供のあり方について取り上げます。
全国の消費生活センター等によせられる、オンラインでの旅行予約に関する消費生活相談の件数(平成27年度)は1669件で、5年前の836件と比べて、約2倍に増加しています。
旅行に関するトラブルの相談全体(オンライン以外を含む)のうち、オンラインで予約した旅行に関する相談の割合は、2011年度には3割以下であったのに対し、2015年度には5割近くを占めるに至っています。(※2)
(※1)
オンライン旅行取引サービスの動向整理
(2016年9月30日 消費者庁委託調査)
http://www.caa.go.jp/adjustments/pdf/adjustments_index_1_161017_0001.pdf
(※2)
インターネットで予約した旅行に関するトラブルにご注意
−ホテルに行ったら予約が取れていなかった!?−
(国民生活センター 2016年9月1日)
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20160901_1.html
オンラインでの旅行予約に関連するトラブル等
この1年間にオンラインでの旅行予約をした者のうち、何らかの困ったことを経験している者は、11.9%。
困ったことの内容としては、「問い合わせの電話が繋がらなかった」(23.5%)、「問い合わせの回答がなかなか得られなかった」(19.6%)といった問い合わせ対応に関する経験を回答した者が比較的多い。
「確認が不十分で、思っていたものと異なる条件やサービスを予約した」(13.7%)、「入力を間違えて申し込んだ」(11.8%)など、利用者側の操作ミスなどに起因する問題も少なくない。
《主な事例》
・問い合わせの電話が繋がらなかった。
– 予約内容で確認したいことがあったので電話をしたがなかなか繋がらず時間がかかった。(女性、20代、連絡せず)
・問い合わせの回答がなかなか得られなかった。
– Webでの問い合わせの回答がなかなか得られないため、電話をした。電話しても電話に出ない宿泊業者も多いと感じる。(男性、30代、宿泊施設に連絡し解決)
・広告と実際に提供されたものの内容が違った。
– 写真とは違い清潔感がないケースがあった。(女性、30代、連絡せず)
・人数や旅行日、パスポート表記名などの入力を間違えて申し込んでしまった。
– 航空券を往復予約したつもりが出発日の異なる二枚の航空券を予約していた。(男性、60歳以上、連絡せず)
– 自分の操作ミスで希望の時間と異なる列車を予約してしまった。当日まで気がつかなかった。(女性、20代、連絡せず)
・予約した旅行の変更ができなかった。
– 予約の一部を変更できず困った。(男性、20代、運営事業者に連絡し一部解決)
・予約したはずなのに、予約されていなかった。
– 全て入力したが、途中で他のページを開けてしまい、最後の送信ボタンを押したつもりが閉じてしまった。確定メールが来なかったため、問い合わせたら予約が入っていなかった。再入力して確約できた。(女性、60歳以上、運営事業者に連絡し解決)
・予約した内容と実際に提供されたものの内容が違った。
– 一泊二食付きで予約したが一泊朝食付きになっていた。(男性、50代、宿泊施設に連絡し解決)
– 喫煙室希望が禁煙室になっていた。 (女性、40代、宿泊施設に連絡し解決)
・予約した旅行をキャンセルできなかった。
– 予約した宿にキャンセル依頼したが、旅行サイトに連絡がいかず、料金請求があった。旅行サイトに連絡し、宿に確認してもらったことで、料金が決済されることはなかった。サイトへの連絡方法が明示されておらず困った。(男性、60歳以上、運営事業者に連絡し解決)
困った経験等を解決するための連絡・相談状況
困った経験等の解決のために相手の事業者やその他の第三者に連絡や相談を行っている者は、56.9%。40代、50代では8割以上が連絡・相談を行っている。
具体的な連絡・相談先は、「予約に使ったWebサイト・アプリの運営事業者」(51.7%)、「宿泊施設」(44.8%)が多い。
困った経験等を解決するための連絡・相談状況(解決状況、満足度)
連絡・相談により、解決していることが多い(「解決」75.9%、「一部解決」20.7%)。
「解決」した場合、81.8%がその結果に満足しているが、「一部解決」した場合の満足度は50.0%にとどまる。
オンラインでの旅行予約時における確認実施状況(サイト表記等)
「支払代金の内訳や合計等」「先払い、現地払いなどの支払い方法」については、7割前後が常に確認している。
一方、 「e-TBTマークの有無」(11.0%) 、「契約相手の事業者の旅行業登録の有無」(13.3%)、 「国内事業者であるか、海外事業者であるか」(27.1%)を常に確認している者は、他の事項に比べて少ない。
20代・30代は、他の年代に比べて、「事業者」「問い合わせ先・方法」等の表示を常に確認している者が少ない。
スマートフォン利用者は、パソコン利用者に比べて、上記事項の表示を常に確認している者の比率が低い。要因として、若い年代ほどスマホ利用率が高いこと、スマホの方がパソコンに比べて画面上での確認がしづらいこと等が考えられる。
オンラインでの旅行予約時における確認実施状況(確認メール)
ほとんどの利用者(91.4%)が、オンライン旅行予約時に送られてくる確認メールを「すぐ(1日以内)に確認」している。
20代・30代は、他の年代に比べて、 「すぐ(1日以内)に確認する」比率が低い。
旅行業法による消費者保護規定の認知状況
旅行業登録事業者が旅行業法に基づき行うこととされている取組についての認知度は、いずれも10%前後と非常に低い。
オンライン旅行取引サービスを安心して利用できるようにするために望む取組等
事業者には、「サイト上の説明の充実」「問い合わせ先の明記」等が望まれている。
【事業者に対する要望】
・サイト上での写真・説明の充実
– 写真をもっと細かく沢山載せてくれたら現地でがっかりしたり行き違いが減るような気がする。
– 個人情報の保護、旅行内容、宿泊施設、交通機関についてできるだけ詳しい内容を掲載すること。規約をわかりやすい文章で掲載すること。
– 必要・詳細な情報を、わかりやすく掲載すること。万が一の補償を、わかりやすく掲載すること。キャンセルや変更にかかる費用や、無料でできる期
間を、わかりやすく掲載すること。有料になってしまう前に、メールでお知らせすること。
・予約受付の確認連絡
– 予約を受け付けた確認の連絡がほしいです。
・サイト上での問い合わせ先の明記
– 聞きたいことがあるときに、どこの誰に電話して良いか分かると助かる。
ユーザーのトラブル傾向から、オンライン旅行予約サービスにおいて問合せ対応の質向上、サービス説明のわかりやすさや操作ミスを起こさないユーザビリティ改善が求められることがわかります。
また、利用者が注視している契約条件や予約内容の情報はもとより、事業者の基本情報や問い合わせ先や受付時間等についてもわかりやすく表示することが、お客様の信頼性向上につながります。
観光庁では、2015年6月、「オンライン旅行取引の表示等に関するガイドライン」を策定しています。
本ガイドラインには、オンライン旅行取引事業者(OTA)等のサイトに求められる表示事項として、「OTA等に関する基本情報」、「問合せ先に関する事項」、「契約条件に関する事項」、「契約内容確認画面等」の各事項について、適切な表示内容、表示方法等のあり方について記載されています。
------------------------------------------------------------------------
「オンライン旅行取引の表示等に関するガイドライン(OTAガイドライン)」を策定しました!
(観光庁 2016年6月12日)
https://www.mlit.go.jp/kankocho/news06_000234.html
------------------------------------------------------------------------
行政の消費者啓蒙情報や、業界ガイドラインを参照し、お客様への情報提供を今一度チェックされるとよいでしょう。
≪参考情報≫
◆オンラインでの旅行予約におけるトラブルに注意しましょう!
(消費者庁 2017年3月1日)
http://www.caa.go.jp/adjustments/pdf/adjustments_index_1_170301_0001.pdf
◆政府広報オンライン「ここを確認! 旅行予約サイト選びのチェックポイント」
http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201511/1.html#anc01
◆一般社団法人日本旅行業協会「旅行業界におけるウェブ取引への取り組みについて」
観光庁「第1回 OTAガイドライン策定検討委員会資料」(平成27年1月26日)
http://www.mlit.go.jp/common/001080044.pdf
-------------------------------------------------------------------------
◆本ブログをメルマガでまとめ読み!
「ネットショップ おもてなし作法」として、本ブログの1週間分の
情報を、ダイジェストでお届けしています。(毎週金曜日配信)
登録はこちら
-------------------------------------------------------------------------
======================================
◆法令遵守チェック&コピーライティング◆
消費生活アドバイザーが、ネット通販の各種法律違反となる可能性
の高い表示・表現をチェック。顧客視点で、わかりやすく、親切で、
魅力的な広告を制作します。
http://www.fides-cd.co.jp/category/pub01/
======================================
------------------------------------------------------------
ネットショップの信頼性をカタチにします
ECコミュニケーションデザイン フィデス
http://www.fides-cd.co.jp
*このサイトのご利用に際して
------------------------------------------------------------
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック