近年、模倣品・海賊版が広範に、かつ複雑な手段によって製造されるようになり、それらが流通することによる産業上の損害、偽造医薬品等による身体への危害、犯罪組織への資金流入等が深刻な問題となっています。
こうした中、特許庁では1996年度以降、毎年「模倣被害調査」(※)実施しています。
3月に発表された、「2011年度模倣被害調査報告書」によると、2010年度の模倣被害率は前年度比2.7%減の21.9%となっています。
調査結果より、日本での模倣品・サービスの販売提供における被害状況にフォーカスしてみました。
●模倣品・サービスの販売提供地域の上位は、中国(54.0%)及び日本(50.4%)
日本と中国以外のアジア地域では、韓国(20.8%)、台湾(19.6%)、タイ(8.5%)、アメリカ(12.9%)、西欧(9.6%)での被害社率が高い。
(上記、国・地域別被害社率は、知的財産権のいずれかの権利で模倣被害を受けた被害社数を母数とした比率)
●日本での販売提供被害がある企業におけるネット上の模倣被害は62.2%
国内外、製造・経由・販売提供全ての流通構造における模倣被害を受けた企業総回答結果では、インターネット上での被害が53.6%であるのと比較して、日本での販売提供被害がある企業は、8.6%ポイント高い傾向にある。
【日本での販売提供被害がある企業におけるインターネット被害状況】
(単数回答)
●ネットによる模倣被害を受けた知的財産権は、商標がダントツ61.8%
日本での販売提供被害におけるインターネットによる被害では、商標の被害が61.8%とトップで、総回答結果の36.2%を25.6%ポイントと大きく上回る結果となっている。
また、著作物、意匠、特許・実用新案いずれの権利についても総回答結果を上回っている。
【日本での販売提供被害がある企業におけるインターネット上の権利別模倣被害率】
(複数回答)
●ネット模倣被害は、「国内インターネット通販サイトによる模倣品の販売取引」が40.4%
また、日本での販売提供被害がある企業であっても、海外インターネット通販サイトやオークションサイトによる模倣品の販売取引での被害を3 割程度受けている。
【日本での販売提供被害がある企業におけるインターネットによる模倣被害内容】(複数回答)
●ネット上の模倣被害に対する対策で、特に効果があるのは、「販売・出店業者に通報・警告」
インターネット上の模倣被害に対する対策としては、「弁理士や弁護士に相談し法的手段を検討」が51.6%で最も多く、次いで「販売・出店業者に通報・警告」が48.2%で、他の対策に比べて圧倒的に多い。
そのうち特に効果があるものとしては、「販売・出店業者に通報・警告」が52.0%で最も多く、次いで「警察・税関等の取締機関に連絡」が50.0%と回答が続いている。
しかし、「対策をしていない又は検討中」との回答も15.6%存在している。
【インターネット上の模倣被害に対して講じた対策】(複数回答)
具体的に行った特に効果のあった対策について、回答数の多かったものや特徴的な回答は以下のとおり。
•海外の調査会社を起用して、出品者、出店者の究明を行った
•警告文の送付
•自社ホームページでの告知
•フィッシング対策協議会へ通報
•インターネットサービスプロバイダー、オークション業者に削除要請
日本での模倣品・サービスの販売提供被害におけるネット被害の約4割が、「国内インターネット通販サイトによる模倣品の販売取引」となっていることは、由々しき問題だと思います。
インターネットによる被害は増加の一途を辿っており、今後、国内通販サイトでの模倣品販売に対して、企業側からも行政からも模倣被害を減らすべく模倣品・海賊版対策が強まっていくことでしょう。
(※)
模倣被害調査報告書(特許庁国際課)
http://www.jpo.go.jp/torikumi/mohouhin/mohouhin2/jittai/jittai.htm
2011年度模倣被害調査報告書
アンケート調査の概要
調査の対象:
過去5年間(2004年度~2008年度)において日本で特許登録出願、実用新案登録出願、意匠登録出願、商標登録出願を行った国内の企業・団体のうち、合計出願件数の多い上位8,005社を調査対象
調査内容・調査方法 :
2010年度(2010年4月1日~2011年3月31日)の企業における国内外での模倣被害や被害対策の状況等について「模倣被害に関するアンケート調査票」を送付、回収
調査実施期間 :
2011年8月31日 ~ 2011年11月10日
アンケート調査の回収状況
調査票の改修数は4,308社、そのうち有効回答は4,303社、有効回答率は53.8%(4,303社/8,005社)
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次回のCS情報局の更新は、4月25日(水)です。
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2012年04月23日
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